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トップページ古文情報局センター試験 出題古文2011年(平成23年度)
最終更新日 2012年01月25日  


 2011年(平成23年度)センター試験古文

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◆ 2011年(平成23年度)センター試験古文
 2011年のセンター試験は、1月15日(土)と16日(日)の2日間にかけて行われ、 国語の試験は15日(土)に行われました。 本文と訳文、品詞分解を掲載いたします。訳と品詞分解は、当センターにて作成したものです。

2011年 古文 本文

 左馬頭、ともかくも物も言はず、涙をはらはらと流して、「さらば、汝、よきやうに計らひ申せ」とぞのたまひける。正清、「さ候はば、御対面候ひて、すかしまゐらせ給へ」と申しければ、流るる涙を押し拭ひて、さらぬ体にもてなし、入道の御前に参り、「義朝、今度の合戦の大将軍として、忠節を致す。数輩の若党討ち死にし、手負ひ候ふ。しかりといへども、いまだ勲功の賞にも預からず候ふのところに、御首刎ねてまゐらせよと、度々仰せ下され候ふのあひだ、今度の忠賞に申し替へて、御命ばかりをこそ申し助けまゐらせ候へ。ただし、平氏清盛、させる忠功も候はねども、大国あまた賜り、一族朝恩に誇る。義朝など、頭をさし出だすべきやうにも候はず。それに、かくて御わたり候へば、石の中の蜘蛛とやらんのやうに思え候ふ。人の口は悪きものにて候へば、いかなる讒言や出で来候はんずらん。東山なる所に、庵室を構へ持ちて候ふ。貴き所にて候へば、かれに渡らせ給ひ候ひて、しづかに御念仏候へかし」と申されければ、入道、まづ涙をはらはらとこぼして、「あはれ、人間には、子に過ぎたるものこそなかりけれ。子ならざらん者、誰かはかく身に替へて助くべき。生々世々にもこの恩忘るまじきぞよ」とて、手を合はせ喜び給ふ。義朝、心中に、「無慙のことかな。ただ今斬らせ給はんことをも知り給はず、かくのたまふよ」と思ひければ、涙のすすむを、さらぬ体にもてなして、「さらば、正清、御輿まゐらせよ」とのたまへば、「承り候ふ」とて、白木なる腰車を引き出だす。さすがに、なごりの惜しければ、出で遣り給はざりけるを、正清、「疾う疾う」と申すほどに、心ならず乗り給ふ。
 夜半ばかりのことなれば、いづこをそことは知らねども、東の方へは行かずして、七条西の市朱雀へ引きて行く。波多野次郎、力者どもに輿を舁かせて、出で来たりけり。太刀を構へ、待ちかけたり。波多野次郎は、いまだこのことをよくも心得ざりければ、鎌田が袖を控へて言ふやう、「や、殿、これはいかなる御計らひぞ。このこと、総じて心得ず。すでに失ひ奉らんとにこそあんなれ。まことに、入道殿の朝敵とならせ給ふことは、力及ばざることなり。されども、今度、頭殿の大将軍を承らせ給ふといふも、誰故ぞ。入道殿の御威勢なり。東国の輩多く付き奉るといふも、また、入道殿の御譲りの故ぞかし。さこそ勅命力無しといふとも、正しき父の首をばいかでか斬らせ給ふべき。返す返すも口惜しきことかな。明日は天下の口遊となり、人に指を差されさせ給はんずる頭殿の御悪名こそ心憂けれ。そもそも、昔、伊予殿、相模守にて鎌倉にわたらせ給ひし時は、東八箇国の侍、八幡殿を主と頼まぬ者やありし。その子にてましませば、入道殿も我等が主、その子にてましませばこそ、頭殿も主なれ。中にも、和殿は入道殿の御跡懐にて生ほし立てられまゐらせて、御好深き人ぞかし。いかでかやみやみとして討ち奉らんとはし給ふぞ。助け奉るまでそことなくとも、せめては、かくと申して、最後の御念仏をも勧め奉り給へかし」と言ひければ、理とや思ひけん、鎌田、「さらば、和殿、その様を申し給へ」と言ふあひだ、義通、車の轅に取り付きて、泣く泣く申しけるは、「いまだ知らせ給ひ候はずや。頭殿の御承りにて、正清が太刀取りにて、ただ今、車と輿の間にて討たれ給ふべきにて候ふなるは」とて、袖を顔に押し覆ひて、涙にむせびてうつ伏しければ、入道、大きに驚きて、「口惜しきことござんなれ。義朝は、さては、だしぬきけるよな。あはれ、八郎がよく謂ひつるものを。かくあるべしと知りたらば、六人の子供、前後に立て、矢種のあらん限り射尽くして、討ち死にして失せたらば、名を後代にあげてまし。さては、犬死にせんずるにこそ。今度の合戦に院方勝たせ給ひたらば、いかなる勲功・勧賞にも申し替へて、などか義朝一人を助けざるべき。あはれ、親の子を思ふほど、子は親を思はざりけるよ。『諸仏念衆生、衆生不念仏。父母常念子、子不念父母』と、仏の説かせ給へるは、少しも違はず。ただし、かくはあれども、全く我が子悪しかれとは思はぬなり。願はくは、上梵天・帝釈、下堅牢地神に至り給ふまで、義朝が逆罪を助けさせ給へや」とのたまひも終てず、涙にむせび給ひけり。

2011年 古文 現代語訳

※機械翻訳に若干の手を加えた物です。
 左馬頭(源義朝)は、何も言わず、涙をぽろぽろと流して、「それなら、お前の良いように計らえ」とおっしゃった。正清は、「それでしたら、お会いして、なだめて差し上げて下さい。」申し上げると、(義朝は)流れる涙を拭って、素知らぬふりをして、入道(源為義)の所にうかがって、 「義朝は、今度の合戦の大将軍として、忠誠を尽くしました。多くの若党が討ち死にし、怪我をしました。それなのに、いまだ主に尽くした事に対する褒美ももらえずにいらっしゃるところに、首を刎ねて来いと度々のご命令が下されたのでございます間、今度の忠功に対して与えられた褒美に変えて、お命ばかりは助けて差し上げて下さいませ。ただし、平氏の清盛は、たいした忠功もございませんのに、大きな領土を多くいただき、一族は朝廷の恩を自慢しています。義朝など、頭をさし出すべき理由もありません。それに、こうしてご訪問がございますと、石の中の蜘蛛(身動きが出来ないことの例)のようにも思われるのでございます。人の口は悪いものでございますから、どのような讒言(目上の人にうそをついて、他人を悪く言うこと)が出てくるでしょうか。東山にある所に庵室を構えて持ってございます。貴い所でございますれば、そこにお見えになりまして静かにお念仏をお唱え下さい。」と申し上げられると、 入道は、まず涙をぽろぽろとこぼして、ああ、人間には、子供より大切なものはないのだなあ。子供でないような者は、誰がこのように身に替えてまで助けることができようか。生生世世(生まれては死にを繰り返してずっと、未来永劫)この恩を忘れそうにないのだよ。」といって、手を合わせて喜びなさる。義朝は、心の中で、「残酷なことだなあ。たった今斬らせなさるようなことさえも知りなさらずに、このようにおっしゃるよ」と思って、涙がこぼれるのを、素知らぬふりをして、「それならば、正清、車を参らせろ」とおっしゃると、「お引き受け申し上げます」といって、白木で出来ている手車(高貴な人の乗る車)を引き出す。そうはいってもやはり、名残惜しかったので、お出にならなかったのを、正清が、「はやくはやく」と申し上げるので、不本意に乗りなさる。
 夜更けぐらいのことであるのど、どこがどこなのかは分からないけれども、東の方へは行かないで、七条西の市朱雀(京の七条通と朱雀大路が交差するあたり)へ引いて行く。波多野次郎は、力者たちに輿を担がせて、出て来た。鎌田は、朱雀大路で車から輿に乗り移りなさるようなところを討って差し上げようと、刀を構えて、待ちかけていた。波多野次郎は、まだこのことを良くこころえなかったので、鎌田の袖を引き留めて言うことには、「おい、殿、これはどのような計らいであるか。このことは、総じて心得ない。いよいよお命をお奪い申し上げようということらしい。本当に、入道殿の朝敵にならせなさることは、力の及ばないことである。そうではあるけれども、今度、頭殿が大将軍をお引き受けさせなさるというのも、誰のせいなのか。入道殿の威勢である。投獄の輩が多く付いて差し上げるというのも、また、入道殿の譲りのおかげであるよ。そのように天皇のご命令に力は無いというとしても、正しい父の首をどうして斬らせなさるべきなのか。本当にくやしいことだなあ。明日には世間のうわさとなって、人に指を差されせなさるような頭殿の悪いうわさがつらい。そもそも、昔、伊予殿が、相模守で鎌倉にわたらせなさった時は、東八箇国の侍で、八幡殿を主と頼みにしない者がいたか。その子でいらっしゃるから、入道殿も私達の主であり、その子でいらっしゃるから、頭殿も主である。中でも、和殿は入道殿の育ての親であり育て立てられて差し上げて、縁が深い人であるよ。どうしてむざむざ討って差し上げようとしなさるのであるか。助けて差し上げるまではないとしても、せめて、このようにと申し上げて、最後の念仏くらいは勧めて差し上げて下さいよ。」と言ったので、道理と思ったのであろうか、鎌田は、「 そうであるなら、和殿が、その様子を申し上げて下さい。」と言う間、義通が、牛車の轅(腰車の前後に突き出た二本の長い棒)にすがりついて、泣く泣く申し上げたのは、「まだ知らせなさらないのでございます。頭殿のご命令の執行で、正清の刀を取って、たった今、牛車と輿の間で討たれなさるべきことでございますのは」と言って、袖を顔に押しつけて覆って、涙に噎んでうつぶしたので、入道は、大いに驚いて、「くやしいことであるなあ。義朝は、さては、だしぬいたよな。ああ、八郎がよく謂っていたのになあ。このようにあるべきであると知っていたならは、6人の子供を、前後に立てて、矢種があるような限り全部射きって、討ち死んでなくなっていたならは、名を後代にあげていたのになあ。そうして、犬死にするようなことである。今度の合戦で院方が勝たせなさっているならば、どのような勲功・勧賞にも替え申し上げて、どうして義朝一人を助けないべきだろうか。ああ、親が子を思うくらいには、子は親を思わなかったなあ。『諸仏念衆生、衆生不念仏。父母常念子、子不念父母』と、仏が説かせなさっているのは、全然違わない。ただし、このようには存在するけれども、全く私の子を悪いとは思わないのである。願うことなら、上梵天・帝釈、下堅牢地神に至りなさるまで、義朝の逆罪を助けて下さい」とおっしゃるのも終えられず、涙にむせびなさった。  

2011年 古文 品詞分解

※機械翻訳に若干の手を加えた物です。
 左馬頭【名詞:左馬頭】 、 ともかくも【副詞:どちらとも】 物【名詞:物】 も【係助詞:も】 言は/ず、【ハ行四段活用動詞「言ふ」未然形+打消の助動詞「ず」連用形:言わなくって、】 涙【名詞:涙】 を【格助詞:を】  はらはら【副詞:ぽろぽろ】 と【格助詞:と】 流し/て【サ行四段活用動詞「流す」連用形+接続助詞:流して】 、 「 さらば【接続詞:そうであるなら】 、 汝【名詞:おまえ】 、 よき【ク活用形容詞「良し」連体形:よい】 やうに【比況の助動詞「やうなり」連用形:ように】 計らひ/申せ【ハ行四段活用動詞「計らふ」連用形+サ行四段活用動詞「申す」命令形:計らって差し上げろ】 」  と【格助詞:と】 ぞ【係助詞】 のたまひ/ける【ハ行四段活用動詞「のたまふ」連用形+過去の助動詞「けり」連体形:おっしゃった】 。 正清【名詞:正清】 、 「 さ【名詞:それ】 候は/ば【ハ行四段活用動詞「候ふ」未然形+接続助詞:お仕えするなら】 、 御【接頭語】 対面【名詞:顔を合わせること】 候ひ/て【ハ行四段活用動詞「候ふ」連用形+接続助詞:お仕えして】 、 すかし/まゐらせ/給へ【サ行四段活用動詞「すかす」連用形+サ行下二段活用動詞「まゐらす」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」命令形:だまして差し上げて下さい】 」  と【格助詞:と】 申し/けれ/ば【サ行四段活用動詞「申す」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:申し上げたので】 、 流るる【ラ行下二段活用動詞「流る」連体形:流れる】 涙【名詞:涙】 を【格助詞:を】 押し拭ひ/て【ハ行四段活用動詞「押し拭ふ」連用形+接続助詞:拭って】 、 さらぬ体【名詞:素知らぬふり】 に【格助詞:に】 もてなし、【サ行四段活用動詞「もてなす」連用形:取り扱って、】 入道【名詞:仏の道に入ること】 の【格助詞:の】 御前【名詞:身分の高い者の前】 に【格助詞:に】 参り、【ラ行四段活用動詞「参る」連用形:うかがって、】 「 義朝【名詞:義朝】 、 今度【名詞:今度】 の【格助詞:の】 合戦【名詞:合戦】 の【格助詞:の】 大将軍【名詞:大将軍】 と【格助詞:と】 し/て【サ行変格活用動詞「す」連用形+接続助詞:して】 、 忠節【名詞:忠節】 を【格助詞:を】 致す【サ行下二段活用動詞「致す」終止形:よこす】 。 数輩【名詞:多く人々】 の【格助詞:の】 若党【名詞:若党】 討ち死に/し【ナ行変格活用動詞「死ぬ」連用形+サ行変格活用動詞「する」連用形:討ち死にして】 、 手負ひ【名詞:ケガ】 候ふ【ハ行四段活用動詞「候ふ」終止形:お仕えする】 。 しかり/と【ラ行変格活用動詞「しかり」終止形+:そのようであると】 いへ/ども【ハ行四段活用動詞「いふ」已然形+接続助詞:いうけれども】 、 いまだ【副詞:まだ】 勲功の賞【名詞:尽くした功績に対する褒美】 に【格助詞:に】 も【係助詞:も】 預から/ず/候ふ/の【ラ行四段活用動詞「預かる」未然形+打消の助動詞「ず」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」連体形+格助詞:預からなくのでございます】 ところ【名詞:ところ】 に【格助詞:に】 、 御首【名詞:お頭】 刎ね/て【ナ行下二段活用動詞「刎ぬ」連用形+接続助詞:刎ねて】 まゐらせよ【サ行下二段活用動詞「まゐらす」命令形:差し上げろ】 と【格助詞:と】 、 度々【副詞:たびたび】 仰せ【名詞:ご命令】 下さ/れ/候ふ【サ行四段活用動詞「下す」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」連体形:お下しになる】 の【格助詞:の】 あひだ【名詞:間】 、 今度【名詞:今度】 の【格助詞:の】 忠賞【名詞:忠賞】 に【格助詞:に】 申し【サ行四段活用動詞「申す」連用形:申し上げ】 替へ/て【ハ行下二段活用動詞「替ふ」連用形+接続助詞:替えて】 、 御【接頭語】 命【名詞:命】 ばかり【副助詞:ばかり】 を【格助詞:を】 こそ【係助詞】 申し【サ行四段活用動詞「申す」連用形:申し上げ】 助け/まゐらせ/候へ【カ行下二段活用動詞「助く」連用形+サ行下二段活用動詞「まゐらす」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」命令形:助けて差し上げて下さいませ】 。 ただし【接続助詞:ただし】、 平氏【名詞:平氏】 清盛【名詞:清盛】 、 させる【連体詞:たいした】 忠功【名詞:忠功】 も【係助詞:も】 候は/ね/ども【ハ行四段活用動詞「候ふ」未然形+打消の助動詞「ず」已然形+接続助詞:ありませんけれども】 、 大国【接頭語:大きな国】 あまた【副詞:数多く】 賜り【ラ行四段活用動詞「賜る」連用形:いただいて】、 一族【名詞:一族】 朝恩【名詞:天皇のお恵み】 に【格助詞:に】 誇る【ラ行四段活用動詞「誇る」終止形:誇る】 。 義朝【名詞:義朝】 など【副助詞:なんか】 、 頭【名詞:頭】 を【格助詞:を】 さし出だす/べき【サ行四段活用動詞「出だす」連体形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」連体形:出すべき】 やうに【比況の助動詞「やうなり」連用形:ように】 も【係助詞:も】 候は/ず【ハ行四段活用動詞「候ふ」未然形+打消の助動詞「ず」終止形:ありません】 。 それ【名詞:それ】 に【格助詞:に】 、 かくて【副詞:こうして】 御【接頭語】 わたり【名詞:わたり】 候へ/ば【ハ行四段活用動詞「候ふ」已然形+接続助詞:お仕えすると】 、 石【名詞:石】 の【格助詞:の】 中【名詞:中】 の【格助詞:の】 蜘蛛【名詞:クモ】 と【格助詞:と】 やら/ん【ラ行四段活用動詞「やる」未然形+婉曲の助動詞「ん」連体形:やるような】 の【格助詞:の】 やうに【比況の助動詞「やうなり」連用形:ように】 思え/候ふ【ヤ行下二段活用動詞「思ゆ」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」連体形:思われるのでございます】 。 人【名詞:人】 の【格助詞:の】 口【名詞:口】 は【係助詞:は】 悪き【ク活用形容詞「悪し」連体形:よくない】 もの【名詞:もの】 に/て【断定の助動詞「なり」連用形+接続助詞:であって】 候へ/ば【ハ行四段活用動詞「候ふ」已然形+接続助詞:ありますので】 、 いかなる【形容動詞「いかなる」連体形:どのような】 讒言【名詞:讒言(目上の人に事実と異なることを告げて人を悪く言うこと)】 や【係助詞】 出で来/候は/んず/らん【カ行変格活用動詞「出で来」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」未然形+推量の助動詞「んず」終止形+推量の助動詞「らん」連体形:現れるでしょう】 。 東山【名詞:東山】 なる【存在の助動詞連用形:にある】 所【名詞:所】 に【格助詞:に】 、 庵室【名詞:庵室】 を【格助詞:を】 構へ【ハ行下二段活用動詞「構ふ」連用形:構え】 持ち/て【タ行四段活用動詞「持つ」連用形+接続助詞:持って】 候ふ【ハ行四段活用動詞「候ふ」終止形:あります】 。 貴き【ク活用形容詞「貴し」連体形:貴い】 所【名詞:所】 にて【格助詞:で】 候へ/ば【ハ行四段活用動詞「候ふ」已然形+接続助詞:ありますと】 、 かれ【名詞:それ】 に【格助詞:に】 渡ら/せ/給ひ/候ひ/て【ラ行四段活用動詞「渡る」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」連用形+接続助詞:渡らせなさるのでございまして】 、 しづかに【ナリ活用形容動詞「静かなり」連用形:静かに】 御【接頭語】 念仏【名詞:念仏】 候へ/かし【ハ行四段活用動詞「候ふ」命令形+終助詞:お仕えしろよ】 」  と【格助詞:と】 申さ/れ/けれ/ば【サ行四段活用動詞「申す」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:申し上げられたので】 、 入道【名詞:仏の道に入ること】 、 まづ【副詞:まず】 涙【名詞:涙】 を【格助詞:を】 はらはら【副詞:ぽろぽろ】 と【格助詞:と】 こぼし/て【サ行四段活用動詞「こぼす」連用形+接続助詞:こぼして】 、 「 あはれ【感動詞:ああ】 、 人間【名詞:人間】 に【格助詞:に】 は【係助詞:は】 、 子【名詞:子】 に【格助詞:に】 過ぎ/たる【ガ行上二段活用動詞「過ぐ」連用形+完了の助動詞「たり」連体形:過ぎている】 もの【名詞:もの】 こそ【係助詞】 なかり/けれ【ク活用形容詞「なし」連用形+過去の助動詞「けり」已然形:なかった】 。 子【名詞:子】 なら/ざら/ん【断定の助動詞「なり」未然形+打消の助動詞「ず」未然形+婉曲の助動詞「ん」連体形:ではないような】 者【名詞:者】 、 誰【名詞:誰】 か【係助詞:が】 は【係助詞:は】 かく【副詞:このように】 身【名詞:身】 に【格助詞:に】 替へ/て【ハ行下二段活用動詞「替ふ」連用形+接続助詞:替えて】 助く/べき【カ行下二段活用動詞「助く」終止形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」連体形:助けるべき】 。 生々【名詞:生々】 世々【名詞:世々】 に【格助詞:に】 も【係助詞:も】 こ/の【名詞+格助詞:この】 恩【名詞:恩】 忘る/まじき/ぞ/よ【ラ行下二段活用動詞「忘る」終止形+打消推量の助動詞「まじ」連体形+係助詞+終助詞:忘れそうにないのだよ】 」  とて【格助詞:といって】 、 手【名詞:手】 を【格助詞:を】 合はせ【サ行下二段活用動詞「合はす」連用形:合わせ】 喜び/給ふ【バ行四段活用動詞「喜ぶ」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」終止形:喜びなさる】 。 義朝【名詞:義朝】 、 心中【名詞:心中】 に【格助詞:に】 、 「 無慙【名詞:無慙】 の【格助詞:の】 こと【名詞:こと】 かな【終助詞:だなあ】 。 ただ今【名詞:たった今】 斬ら/せ/給は/ん【ラ行四段活用動詞「斬る」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」未然形+婉曲の助動詞「ん」連体形:斬らせなさるような】 こと【名詞:こと】 を/も【格助詞+係助詞:さえも】 知り/給は/ず【ラ行四段活用動詞「知る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」未然形+打消の助動詞「ず」連用形:知りなさらずに】 、 かく【副詞:このように】 のたまふ/よ【ハ行四段活用動詞「のたまふ」連体形+詠嘆の終助詞:おっしゃるなあ】 」  と【格助詞:と】 思ひ/けれ/ば【ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:思ったので】 、 涙【名詞:涙】 の【格助詞:が】 すすむ【マ行四段活用動詞「すすむ」連体形:すすむ】 を【格助詞:を】 、 さらぬ体【名詞:素知らぬふり】 に【格助詞:に】 もてなし/て【サ行四段活用動詞「もてなす」連用形+接続助詞:取り扱って】 、 「 さらば【接続詞:そうであるなら】 、 正清【名詞:正清】 、 御輿【名詞:御輿】 まゐらせよ【サ行下二段活用動詞「まゐらす」命令形:差し上げろ】 」  と【格助詞:と】 のたまへ/ば【ハ行四段活用動詞「のたまふ」已然形+接続助詞:おっしゃると】 、 「 承り/候ふ【ラ行四段活用動詞「承る」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」連体形:お聞きするのでございます】 」  とて【格助詞:といって】 、 白木【名詞:白木】 なる【断定の助動詞「なり」連体形:である】 腰車【名詞:手車(高貴な人の乗る車)】 を【格助詞:を】 引き【カ行四段活用動詞「引く」連用形:引き】 出だす【サ行四段活用動詞「出だす」終止形:出す】 。 さすがに【ナリ活用形容動詞「さすがなり」連用形:そうもいかなくて】 、 なごり【名詞:名残】 の【格助詞:が】 惜しけれ/ば【シク活用形容詞「惜し」已然形+接続助詞:もったいないと】 、 出で遣り/給は/ざり/ける【ラ行四段活用動詞「出で遣る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」未然形+打消の助動詞「ず」連用形+過去の助動詞「けり」連体形:出遣りなさらなかった】 を【格助詞:を】 、 正清【名詞:正清】 、 「 疾う【ク活用形容詞「疾し」連用形:はやく】 疾う【ク活用形容詞「疾し」連用形:はやく】 」  と【格助詞:と】 申す/ほど【サ行四段活用動詞「申す」連体形+名詞:申し上げるくらい】 に【格助詞:に】 、 心【名詞:心】 なら/ず【断定の助動詞「なり」未然形+打消の助動詞「ず」連用形:ではなく】 乗り/給ふ【ラ行四段活用動詞「乗る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」終止形:乗りなさる】 。 
 夜半【名詞:夜更け】 ばかり【副助詞:ぐらい】 の【格助詞:の】 こと【名詞:こと】 なれ/ば【断定の助動詞「なり」已然形+接続助詞:であると】 、 いづこ【名詞:どこ】 を【格助詞:を】 そこ【名詞:そこ】  と【格助詞:と】 は【係助詞:は】 知ら/ね/ども【ラ行四段活用動詞「知る」未然形+打消の助動詞「ず」已然形+接続助詞:知らないけれども】 、 東【名詞:東】 の【格助詞:の】 方【名詞:方】 へ【格助詞:へ】 は【係助詞:は】 行か/ず/して【カ行四段活用動詞「行く」未然形+打消の助動詞「ず」連用形+接続助詞:行かずに】 、 七条【名詞:七条】 西【名詞:西】 の【格助詞:の】 市【名詞:市】 朱雀【名詞:朱雀】 へ【格助詞:へ】 引き/て【カ行四段活用動詞「引く」連用形+接続助詞:引いて】 行く【カ行四段活用動詞「行く」終止形:行く】 。 波多野次郎【名詞:波多野次郎】 、 力者【名詞:力者】 ども【接尾語:等】 に【格助詞:に】 輿【名詞:輿】 を【格助詞:を】 舁か/せ/て【カ行四段活用動詞「舁く」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+接続助詞:舁かせて】 、 出で来たり/けり【ラ行四段活用動詞「出で来たる」連用形+過去の助動詞「けり」終止形:出て来た】 。 太刀【名詞:刀】 を【格助詞:を】 構へ【ハ行下二段活用動詞「構ふ」連用形:構えて】  、 待ち【タ行四段活用動詞「待つ」連用形:待ち】 かけ/たり【ラ行下二段活用動詞「かく」連用形+完了の助動詞「たり」終止形:かけている】 。 波多野次郎【名詞:波多野次郎】 は【係助詞:は】 、 いまだ【副詞:まだ】 こ/の【名詞+格助詞:この】 こと【名詞:こと】 を【格助詞:を】 よく【ク活用形容詞「よし」連用形:良く】 も【係助詞:も】 心得/ざり/けれ/ば【ア行下二段活用動詞「心得」未然形+打消の助動詞「ず」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:こころえなかったので】 、 鎌田【名詞:鎌田】 が【格助詞:の】 袖【名詞:袖】 を【格助詞:を】 控へ/て【ハ行下二段活用動詞「控ふ」連用形+接続助詞:控えて】 言ふ【ハ行四段活用動詞「言ふ」連体形:言う】 やう【名詞:よう】 、 「 や【感動詞:おい】 、 殿【名詞:殿】 、 これ【名詞:これ】 は【係助詞:は】 いかなる【形容動詞「いかなる」連体形:どのような】 御【接頭語】 計らひ【名詞:計らい】 ぞ【係助詞:である】 。 こ/の【名詞+格助詞:この】 こと【名詞:こと】 、 総じて【副詞:総じて】 心得/ず【ア行下二段活用動詞「心得」未然形+打消の助動詞「ず」終止形:こころえない】 。 すでに【副詞:すでに】 失ひ/奉ら/ん【ハ行四段活用動詞「失ふ」連用形+謙譲の補助動詞「奉る」未然形+意志・推量の助動詞「ん」連体形:失って差し上げよう】 と【格助詞:と】 に【格助詞:に】 こそ【係助詞】 あん/なれ【ラ行変格活用動詞「あり」撥音便連体形+伝聞・推定の助動詞「なり」已然形:あるらしい】 。 まことに【ナリ活用形容動詞「まことなり」連用形:本当に】 、 入道殿【名詞:入道殿】 の【格助詞:の】 朝敵【名詞:朝敵】 と【格助詞:と】 ならせ/せ/給ふ【ラ行四段活用動詞「なる」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形:ならせなさる】 こと【名詞:こと】 は【係助詞:は】 、 力【名詞:力】 及ば/ざる【バ行四段活用動詞「及ぶ」未然形+打消の助動詞「ず」連体形:及ばない】 こと【名詞:こと】 なり【断定の助動詞「なり」終止形:である】 。 されど【接続詞:そうではあるけれど】 も【係助詞:も】 、 今度【名詞:今度】 、 頭殿【名詞:頭殿】 の【格助詞:の】 大将軍【名詞:大将軍】 を【格助詞:を】 承ら/せ/給ふ/と【ラ行四段活用動詞「承る」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形+助詞:お聞きさせなさると】 いふ【ハ行四段活用動詞「いふ」連体形:いう】 も【係助詞:も】 、 誰故【名詞:誰のせい】 ぞ【係助詞:である】 。 入道殿【名詞:入道殿】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 威勢【名詞:威勢】 なり【断定の助動詞「なり」終止形:である】 。 東国【名詞:東国】 の【格助詞:の】 輩【名詞:仲間】 多く【ク活用形容詞「多し」連用形:多く】 付き/奉る/と【カ行四段活用動詞「付く」連用形+謙譲の補助動詞「奉る」連体形+助詞:付いて差し上げると】 いふ【ハ行四段活用動詞「いふ」連体形:いう】 も【係助詞:も】 、 また【副詞:また】 、 入道殿【名詞:入道殿】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 譲り【名詞:譲り】 の【格助詞:の】 故【名詞:理由】 ぞ【係助詞】 かし【終助詞:であるよ】 。 さ【名詞:そのように】 こそ【係助詞】 勅命【名詞:天皇のご命令】 力【名詞:力】 無し/と【ク活用形容詞「無し」終止形+:無いと】 いふ/とも【ハ行四段活用動詞「いふ」連体形+接続助詞:いうとしても】 、 正しき【シク活用形容詞「正し」連体形:正しい】 父【名詞:父】 の【格助詞:の】 首【名詞:首】 を/ば【格助詞+係助詞「は」の濁音化:を】 いかで【副詞:どうして】 か【係助詞】 斬ら/せ/給ふ/べき【ラ行四段活用動詞「斬る」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」連体形:斬らせなさるべき】 。 返す返す【副詞:本当に】 も【係助詞:も】 口惜しき【シク活用形容詞「口惜し」連体形:くやしい】 こと【名詞:こと】 かな【終助詞:だなあ】 。 明日【名詞:明日】 は【係助詞:は】 天下【名詞:天下】 の【格助詞:の】 口遊【名詞:噂】 と【格助詞:と】 なり【ラ行四段活用動詞「なる」連用形:なって】 、 人【名詞:人】 に【格助詞:に】 指【名詞:指】 を【格助詞:を】 差さ/れ/させ/給は/んずる【サ行四段活用動詞「差す」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」未然形+使役・尊敬の助動詞「さす」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」未然形+婉曲の助動詞「んず」連体形:差されせなさるような】 頭殿【名詞:頭殿】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 悪名【名詞:悪いうわさ】 こそ【係助詞】 心憂けれ【ク活用形容詞「心憂し」已然形:つらい】 。 そもそも【接続助詞:そもそも】 、 昔【名詞:昔】 、 伊予殿【名詞:伊予殿】 、 相模守【名詞:相模守】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 鎌倉【名詞:鎌倉】 に【格助詞:に】 わたら/せ/給ひ/し【ラ行四段活用動詞「わたる」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+過去の助動詞「き」連体形:わたらせなさった】 時【名詞:時】 は【係助詞:は】 、 東八箇国【名詞:東8箇国】 の【格助詞:の】 侍【名詞:従者】 、 八幡殿【名詞:八幡殿】 を【格助詞:を】 主【名詞:主】 と【格助詞:と】 頼ま/ぬ【マ行四段活用動詞「頼む」未然形+打消の助動詞「ず」連体形:頼みにしない】 者【名詞:者】 や【係助詞】 あり/し【ラ行変格活用動詞「あり」連用形+過去の助動詞「き」連体形:いた】 。 そ/の【名詞+格助詞:その】 子【名詞:子】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 ましませ/ば【サ行四段活用動詞「まします」已然形+接続助詞:いらっしゃると】 、 入道殿【名詞:入道殿】 も【係助詞:も】 我等【名詞:私達】 が【格助詞:の】 主【名詞:主】 、 そ/の【名詞+格助詞:その】 子【名詞:子】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 ましませ/ば【サ行四段活用動詞「まします」已然形+接続助詞:いらっしゃると】 こそ【係助詞】 、 頭殿【名詞:頭殿】 も【係助詞:も】 主【名詞:主】 なれ【断定の助動詞「なり」已然形:である】 。 中【名詞:中】 に【格助詞:に】 も【係助詞:も】 、 和殿【名詞:和殿】 は【係助詞:は】 入道殿【名詞:入道殿】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 跡懐【名詞:育ての親】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 生ほし【サ行四段活用動詞「生ほす」連用形:育て】 立て/られ/まゐらせ/て【タ行下二段活用動詞「立つ」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「らる」連用形+サ行下二段活用動詞「まゐらす」連用形+接続助詞:立てられて差し上げて】 、 御【接頭語】 好【名詞:好】 深き【ク活用形容詞「深し」連体形:深い】 人【名詞:人】 ぞ【係助詞】 かし【終助詞:であるよ】 。 いかで【副詞:どうして】 か【係助詞】 やみやみと/して【タリ活用形容動詞「やみやみたり」連用形+接続助詞:あっけなくて】 討ち/奉ら/ん【タ行四段活用動詞「討つ」連用形+謙譲の補助動詞「奉る」未然形+意志・推量の助動詞「ん」連体形:討って差し上げよう】  と【格助詞:と】 は【係助詞:は】 し/給ふ/ぞ【サ行変格活用動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形+係助詞:しなさるのである】。 助け/奉る【カ行下二段活用動詞「助く」連用形+謙譲の補助動詞「奉る」連体形:助けて差し上げる】 まで【格助詞:まで】 そこ【名詞:そこ】 と【格助詞:と】 なく【ク活用形容詞「なし」連用形:なく】 とも【格助詞:とも】 、 せめて【副詞:せめて】 は【係助詞:は】 、 かく【副詞:このように】 と【格助詞:と】 申し/て【サ行四段活用動詞「申す」連用形+接続助詞:申し上げて】 、 最後【名詞:最後】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 念仏【名詞:念仏】 を/も【格助詞+係助詞:さえも】 勧め/奉り/給へ/かし【マ行下二段活用動詞「勧む」連用形+謙譲の補助動詞「奉る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」命令形+終助詞:勧めて差し上げて下さいよ】 」  と【格助詞:と】 言ひ/けれ/ば【ハ行四段活用動詞「言ふ」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:言ったので】 、 理【名詞:道理】 と【格助詞:と】 や【係助詞】 思ひ/けん【ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形+過去推量の助動詞「けん」連体形:思ったのであろう】 、 鎌田【名詞:鎌田】 、 「 さらば【接続詞:そうであるなら】 、 和殿【名詞:和殿】 、 そ/の【名詞+格助詞:その】 様【名詞:様子】 を【格助詞:を】 申し/給へ【サ行四段活用動詞「申す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」命令形:申し上げて下さい】 」  と【格助詞:と】 言ふ【ハ行四段活用動詞「言ふ」連体形:言う】 あひだ【名詞:間】 、 義通【名詞:義通】 、 車【名詞:牛車】 の【格助詞:の】 轅【名詞:轅】 に【格助詞:に】 取り付き/て【カ行四段活用動詞「取り付く」連用形+接続助詞:すがりついて】 、 泣く泣く【副詞:泣く泣く】 申し/ける【サ行四段活用動詞「申す」連用形+過去の助動詞「けり」連体形:申し上げた】 は【係助詞:は】 、 「 いまだ【副詞:まだ】 知ら/せ/給ひ/候は/ず/や【サ行四段活用動詞「知る」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+丁寧の補助動詞「候ふ」未然形+打消の助動詞「ず」終止形+終止形:知らせなさらないのでございます】 。 頭殿【名詞:頭殿】 の【格助詞:の】 御【接頭語】 承り【名詞:命令の執行】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 、 正清【名詞:正清】 が【格助詞:の】 太刀【名詞:刀】 取り/に/て【ラ行四段活用動詞「取る」連用形+完了の助動詞「ぬ」連用形+接続助詞:取って】 、 ただ今【名詞:たった今】 、 車【名詞:牛車】 と【格助詞:と】 輿【名詞:輿】 の【格助詞:の】 間【名詞:間】 に/て【格助詞+接続助詞:で】 討た/れ/給ふ/べき/に/て【タ行四段活用動詞「討つ」未然形+受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」連体形+格助詞「に」+終助詞「て」:討たれなさるべきことで】 候ふ/なる【ハ行四段活用動詞「候ふ」連体形+断定の助動詞「なり」連体形:お仕えするのである】 は【係助詞:は】 」  とて【格助詞:といって】 、 袖【名詞:袖】 を【格助詞:を】 顔【名詞:顔】 に【格助詞:に】 押し【サ行四段活用動詞「押す」連用形:押し】 覆ひ/て【ハ行四段活用動詞「覆ふ」連用形+接続助詞:覆って】 、 涙【名詞:涙】 に【格助詞:に】 むせび/て【バ行四段活用動詞「むせぶ」連用形+接続助詞:むせんで】 うつ伏し/けれ/ば【サ行四段活用動詞「うつ伏す」連用形+過去の助動詞「けり」已然形+接続助詞:伏したので】 、 入道【名詞:仏の道に入ること】 、 大きに【ナリ活用形容動詞「大きなり」連用形:大きく】 驚き/て【カ行四段活用動詞「驚く」連用形+接続助詞:目を覚まして】 、 「 口惜しき【シク活用形容詞「口惜し」連体形:くやしい】 こと【名詞:こと】 ござんなれ【「にこそあるなれ」の転:なあ】 。 義朝【名詞:義朝】 は【係助詞:は】 、 さて【副詞:さて】 は【係助詞:は】 、 だし【サ行四段活用動詞「だす」連用形:だし】 ぬき/ける【カ行四段活用動詞「ぬく」連用形+過去の助動詞「けり」連体形:ぬいた】 よ【間投助詞:よ】 な【名詞:な】 。 あはれ【感動詞:ああ】 、 八郎【名詞:八郎】 が【格助詞:が】 よく【ク活用形容詞「よし」連用形:よく】 謂ひ/つる/ものを【ハ行四段活用動詞「謂ふ」連用形+完了の助動詞「つ」連体形+接続助詞:謂ってしまうのになぁ】 。 かく【副詞:このように】 ある/べし/と【ラ行変格活用動詞「あり」連体形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」終止形+終止形:いるべきであると】 知り/たら【ラ行四段活用動詞「知る」連用形+完了の助動詞「たり」未然形:知っているなら】 ば【係助詞:は】 、 六人【名詞:6人】 の【格助詞:の】 子供【名詞:子供】 、 前後【名詞:前後】 に【格助詞:に】 立て【タ行下二段活用動詞「立つ」連用形:立てて】 、 矢種【名詞:矢種】 の【格助詞:が】 あら/ん【ラ行変格活用動詞「あり」未然形+婉曲の助動詞「ん」連体形:あるような】 限り【名詞:限度】 射/尽くし/て【ラ行上一段活用動詞「射る」連用形+サ行四段活用動詞「尽くす」連用形+接続助詞:完全に射きって】 、 討ち【タ行四段活用動詞「討つ」連用形:討ち】 死に/して【ナ行変格活用動詞「死ぬ」連用形+接続助詞:死んで】 失せ/たら【サ行下二段活用動詞「失す」連用形+完了の助動詞「たり」未然形:なくなっているなら】 ば【係助詞:は】 、 名【名詞:名】 を【格助詞:を】 後代【名詞:後代】 に【格助詞:に】 あげ/て/まし【ガ行下二段活用動詞「あぐ」連用形+完了の助動詞「つ」未然形+反実仮想の助動詞「まし」終止形:あげのならよかった】 。 さて【副詞:さて】 は【係助詞:は】 、 犬死にせ/んずる【サ行変格活用動詞「犬死にす」未然形+婉曲の助動詞「んず」連体形:犬死にするような】 に【格助詞:に】 こそ【係助詞】 。 今度【名詞:今度】 の【格助詞:の】 合戦【名詞:合戦】 に【格助詞:に】 院方【名詞:院方】 勝た/せ/給ひ/たら【タ行四段活用動詞「勝つ」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+完了の助動詞「たり」未然形:勝たせなさっているなら】 ば【係助詞:は】 、 いかなる【形容動詞「いかなる」連体形:どのような】 勲功【名詞:勲功】 ・ 勧賞【名詞:勧賞】 に【格助詞:に】 も【係助詞:も】 申し【サ行四段活用動詞「申す」連用形:申し上げ】 替へ/て【ハ行下二段活用動詞「替ふ」連用形+接続助詞:替えて】 、 など【副詞:どうして】 か【係助詞】 義朝【名詞:義朝】 一人【名詞:1人】 を【格助詞:を】 助け/ざる/べき【カ行下二段活用動詞「助く」未然形+打消の助動詞「ず」連体形+推量・意志・勧誘・当然・命令・適当の助動詞「べし」連体形:助けないべき】 。 あはれ【感動詞:ああ】 、 親【名詞:親】 の【格助詞:の】 子【名詞:子】 を【格助詞:を】 思ふ/ほど【ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形+名詞:思うくらい】 、 子【名詞:子】 は【係助詞:は】 親【名詞:親】 を【格助詞:を】 思は/ざり/ける/よ【ハ行四段活用動詞「思ふ」未然形+打消の助動詞「ず」連用形+過去の助動詞「けり」連体形+詠嘆の終助詞:思わなかったなあ】 。 『 諸【接頭語:色々な】 仏【名詞:仏】 念【名詞:念】 衆生【名詞:衆生】 、 衆生【名詞:衆生】  不念仏【名詞:不念仏】 。 父母【名詞:父と母】 常【名詞:通常】 念【名詞:念】 子【名詞:子】 、 子【名詞:子】  不念【名詞:不念】 父母【名詞:父と母】 』  と【格助詞:と】 、 仏【名詞:仏】 の【格助詞:が】 説か/せ/給へ/る【カ行四段活用動詞「説く」未然形+使役・尊敬の助動詞「す」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+完了の助動詞「り」連体形:説かせなさっている】 は【係助詞:は】 、 少しも【副詞:全然】 違は/ず【ハ行四段活用動詞「違ふ」未然形+打消の助動詞「ず」終止形:違わない】 。 ただし【接続詞:ただし】、 かく【副詞:このように】 は【係助詞:は】 あれ/ども【ラ行変格活用動詞「あり」已然形+接続助詞:あるけれども】 、 全く【ク活用形容詞「全し」連用形:完全に】 我【名詞:私】 が【格助詞:の】 子【名詞:子】 悪しかれ/と【シク活用形容詞「悪し」命令形+:悪いと】 は【係助詞:は】 思は/ぬ/なり【ハ行四段活用動詞「思ふ」未然形+打消の助動詞「ず」連体形+断定の助動詞「なり」終止形:思わないのである】 。 願は/く/は【ハ行四段活用動詞「願ふ」未然形+接尾語+助詞:願うことなら】 、 上梵天【名詞:上梵天】 ・ 帝釈【名詞:帝釈】 、 下堅牢地神【名詞:下堅牢地神】 に【格助詞:に】 至り/給ふ【ラ行四段活用動詞「至る」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連体形:やって来なさる】 まで【格助詞:まで】 、 義朝【名詞:義朝】 が【格助詞:の】 逆罪【名詞:逆罪】 を【格助詞:を】 助け/させ/給へ/や【カ行下二段活用動詞「助く」未然形+使役・尊敬の助動詞「さす」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」命令形+間投助詞:助けさせて下さい】 」  と【格助詞:と】 のたまひ【名詞:お言葉】 も【係助詞:も】 終て/ず【タ行下二段活用動詞「終つ」未然形+打消の助動詞「ず」連用形】 、 涙【名詞:涙】 に【格助詞:に】 むせび/給ひ/けり【バ行四段活用動詞「むせぶ」連用形+尊敬の補助動詞「給ふ」連用形+過去の助動詞「けり」終止形:むせびなさった】 。


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