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最終更新日 2012年05月08日 


 竹取物語

◆ かぐや姫おひたち

 今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて、 竹を取りつつ、よろづの事に使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。 その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。怪しがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。 それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。翁いふやう、 「我朝ごと夕ごとに見る竹の中に、おはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり。」 とて、手にうち入れて家に持ちて来ぬ。妻の嫗に預けて養はす。うつくしきこと限りなし。 いと幼ければ籠に入れて養ふ。
 竹取の翁この子を見つけて後に、竹を取るに、節を隔てて、よごとに、 金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて翁やうやう豊かになり行く。
 この児養ふ程に、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになる程に、 よき程なる人になりぬれば、髪上などさうして、髪上せさせ裳着す。帳のうちよりも出ださず、 いつき養ふ。この児のかたち清らなること世になく、家の内は暗き所なく光満ちたり。 翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば苦しき事も止みぬ。腹立たしき事も慰みけり。 翁、竹を取ること久しくなりぬ。勢ひ猛の者になりにけり。 この子いと大きになりぬれば、名を御室戸斎部の秋田を呼びてつけさす。 秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。この程三日、うちあげ遊ぶ。 よろづの遊びをぞしける。男は受け嫌はず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。

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◆ かぐや姫の嘆き

 八月一五日ばかりの月に出でゐて、かぐや姫いといたく泣きたまふ。 人目も今はつつみたまはず泣きたまふ。これを見て、親どもも「何事ぞ。」と問ひさわぐ。
 かぐや姫泣く泣く言ふ、「先々も申さむと思ひしかども、必ず心惑はしたまはむものぞと思ひて、今まで過ごしはべりつるなり。 さのみやはとて、うち出ではべりぬるぞ。おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり。 それを、むかしの契りありけるによりなむ、この世界には詣で来たりける。 今は帰るべきになりにければ、この月の一五日に、かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず。 さらずまかりぬべければ、おぼし嘆かむが悲しきことを、この春より思ひ嘆きはべるなり。」と言ひて、 いみじく泣くを、翁、「こは、なでふことのたまふぞ。竹の中より見つけきこえたりしかど、 菜種の大きさおはせしを、わが丈立ち並ぶまで養ひたてまつるわが子を、何人か迎へきこえむ。まさに許さむや。」 と言ひて、「我こそ死なめ。」とて、泣きののしること、いと堪へがたげなり。
 かぐや姫のいはく、「月の都の人にて、父母あり。片時の間とて、かの国よりまうで来しかども、 かくこの国にはあまたの年を経ぬるになむありける。 かの国の父母のこともおぼえず、ここには、かく久しく遊びきこえて、ならひたてまつれり。 いみじからむ心地もせず。悲しくのみある。 されど、おのが心ならず、まかりなむとする。」と言ひて、もろともにいみじう泣く。
 使はるる人々も、年ごろならひて、立ち別れなむことを、 心ばへなどあてやかにうつくしかりつることを見ならひて、 恋しからむことの堪へがたく、湯水飲まれず、同じ心に嘆かしがりけり。

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◆ 火鼠の皮衣

 家の門にもていたりて立てり。竹取出できて、取り入れて、かぐや姫に見す。かぐや姫の、皮衣を見ていはく、「うるはしき皮なめり。わきてまことの皮ならむとも知らず。」竹取答へていはく、「とまれかくまれ、まづ請じ入れたてまつらむ。世の中に見えぬ皮衣のさまなれば、これをと思ひ給ひね。人ないたくわびさせたてまつらせ給ひそ。」と言ひて、呼び据ゑたてまつれり。
 かく呼び据ゑて、「このたびはかならずあはむ。」と嫗の心にも思ひをり。この翁は、かぐや姫のやもめなるを嘆かしければ、よき人にあはせむと思ひはかれど、せちに「否。」と言ふことなれば、え強ひねば、理なり。
 かぐや姫、翁にいはく、「この皮衣は、火に焼かむに、焼けずはこそ、まことならめと思ひて、人の言ふことにも負けめ。『世になき物なれば、それをまことと疑ひなく思はむ。』とのたまふ。なほ、これを焼きて心みむ。」と言ふ。翁、「それ、さも言はれたり」と言いて、大臣に、「かくなむ申す。」と言ふ。大臣答へていはく、「この皮は、唐土にもなかりけるを、からうじて求め尋ね得たるなり。なにの疑ひあらむ。」「さは申すとも、はや焼きて見給へ。」と言へば、火の中にうちくべて焼かせ給ふに、めらめらと焼けぬ。「さればこそ、異物の皮なりけり。」と言ふ。大臣、これを見給ひて、顔は草の葉の色にてゐ給へり。かぐや姫は、「あな、うれし。」と喜びてゐたり。かの詠み給ひける歌の返し、箱に入れて返す。

 名残りなく 燃ゆと知りせば 皮衣 思ひのほかに おきて見ましを

 とぞありける。されば、帰りいましにけり。

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◆ かぐや姫との別れ

 かかるほどに、宵うちすぎて、子の時ばかりに、家のあたり、昼の明さにも過ぎて、光りたり。望月の明さを十合はせたるばかりにて、在る人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。大空より、人、雲に乗りて下り来て、土より五尺ばかり上がりたるほどに立ち連ねたり。内外なる人の心ども、物におそはるるやうにて、あひ戦はむ心もなかりけり。からうじて、思ひ起こして、弓矢をとりたてむとすれども、手に力もなくなりて、萎えかかりたり。中に、心さかしき者、念じて射むとすれども、ほかざまへ行きければ、あひも戦はで、心地、ただ痴れに痴れてまもりあへり。

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