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十訓抄は、「じっきんしょう」もしくは「じっくんしょう」と読み、鎌倉時代中期に書かれた説話集である。
人が生きる上で大切にしなければならないことを10個の項目に分けて、それぞれ説話を引き合いに出して説く内容である。
和泉式部、保昌が妻にて、丹後へ下りける後に、京に歌合ありけるに、
小式部内侍、歌詠みにとられて歌を詠みけるを、定頼中納言、
たはぶれて、小式部内侍、局にありけるに、「丹後へ遣はしける人は参りたりや。
いかに心許なく思すらん。」と言ひて、局の前を過ぎられけるを、御簾より半らばかり出でて、
わづかに直衣の袖を控えて、
大江山いくのの道も遠ければまだふみもみず天橋立 と読みかけけり。思はずにあさましくて、「こはいかに、かかるやうやはある。」 とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖を引き放ちて逃げられけり。小式部、これより、 歌詠みの世におぼえ出で来にけり。これはうちまかせて、理運のことなれども、彼の卿の心には、 これほどの歌、ただいま詠み出だすべしとは知られざりけるにや。
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制作:古文自動翻訳研究センター |