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最終更新日 2008年10月20日 


 宇治拾遺物語

◆ 宇治拾遺物語 検非違使忠明

 今は昔、忠明といふ検非違使ありけり。それが若かりけるとき、清水の橋のもとにて、京童部どもといさかひをしけり。京童部手ごとに刀を抜きて、忠明をたち込めて、殺さむとしければ、忠明も太刀を抜きて、御堂ざまに上るに、御堂の東のつまにも、あまた立ちて向かひ合ひたれば、内へ逃げて、蔀のもとをわきに挟みて、前の谷へ踊り落つ。蔀、風にしぶかれて、谷の底に鳥のゐるやうに、やをら落ちにければ、それより逃げて往にけり。京童部ども谷を見下ろして、あさましがり、立ち並みて見けれども、すべきやうもなくて、やみにけりとなむ。

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