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豊前の国の住人太郎入道といふ者ありけり。
をとこなりけるとき、常に猿を射けり。
ある日、山を過ぐるに、大猿ありければ、木に追ひ登せて射たりけるほどに、かせぎに射てけり。
すでに木より落ちむとしけるが、何とやらむ物を木のまたに置くやうにするを見れば、子猿なりけり。
おのが傷を負ひて土に落ちむとすれば、子猿を負ひたるを助けむとて、木のまたに据ゑむとしけるなり。
子猿はまた、母につきて離れじとしけり。かくたびたびすれども、なほ子猿取りつきければ、もろともに地に落ちにけり。
それより長く猿を射ることをばとどめてけり。
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制作:古文自動翻訳研究センター |